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偏微分とは

今回は偏微分について話をしようと思います。”偏った”微分と書き、英語では partial derivative といいます。”derivative”が微分という意味で、”partial”すなわち部分的に微分するという意味です。

偏微分するとは何をすることなのか見るために、まず具体例を考えます。偏微分を表す記号としては、partialを用います。”デル”などと読んだりします。これを通常の微分の時のように用いて、ある関数、例えばx^3 y^2xについての偏微分は次のように書かれます。
frac{partial}{partial x}x^3y^2

xで偏微分を行う際には、x以外の変数を定数だと見なします。xだけを変数と思って微分しなさいということです。今回の場合だと、y^2は定数だと思って、xのみについて微分を行いなさい、ということです。すなわち
frac{partial}{partial x}x^3y^2=3x^2y^2

同じ関数を今度はyについて偏微分することを考えましょう。
frac{partial}{partial y}x^3y^2
この場合はx^3を定数と見なして、変数yについての微分を行います。すなわち
frac{partial}{partial y}x^3y^2=2x^3y
となります。

例えば同じ関数をzで偏微分することを考えた際には、xyも定数と見なすので、答えは0になります。
frac{partial}{partial z}x^3y^2=0

関数f(x,y,z)の偏微分の書き方についてなのですが、これには色々な書き方があります。最もオーソドックスなのは
frac{partial}{partial x}f(x,y,z)
と書くやり方です。また次のような書き方もされます。
left(frac{partial f}{partial x}right)_{y,z}
添字y,zは、変数y,zは定数と見なしましょう、という意味です。これらも省略されて、
frac{partial f}{partial x}
と書かれることも多くあります。またさらに簡略化された別の書き方とて、f_xpartial_x fと書くこともあります。添字xxについての偏微分という意味を表します。
frac{partial}{partial x}f(x,y,z)=left(frac{partial f}{partial x}right)_{f,z}=frac{partial f}{partial x}=f_x=partial_x f
これらは全て、xに関する偏微分、すなわちx以外の変数を定数と見なして、xで微分せよという意味を表します。

通常の微分と同様に、2階以上の偏微分というものも存在します。次のように書かれます。
frac{partial^2 f}{partial x^2}=frac{partial }{partial x}frac{partial f}{partial x}=f_{xx}=partial^2_x f

偏微分は、様々な変数に関して行うことが可能です。例えば、関数f(x,y,z)yについて偏微分したものを、さらにxについて偏微分する場合、次のように書きます。
frac{partial^2 f}{partial x partial y}=frac{partial}{partial x}frac{partial f}{partial y}

ここで大事な点があります。2階の偏微分
frac{partial^2 f}{partial x partial y}, frac{partial^2 f}{partial y partial x}
が共に”連続”であれば、
frac{partial^2 f}{partial x partial y}=frac{partial^2 f}{partial y partial x}
が成り立ちます。この時は偏微分を行った結果が、偏微分を行う順序に依らなくなります。物理で扱うたいていの関数ではこれが成り立つので、覚えておくと良いでしょう。

内積・外積の微分

今回は内積・外積の微分ということで、仰々しいタイトルを付けましが、やることは単純です。内積{bf A}cdot{bf B}の微分はどのように書けるかというと、{bf A}を微分したものと{bf B}の内積と{bf A}{bf B}を微分したものの内積の和になります。
frac{d}{dt}({bf A}cdot{bf B})=frac{d{bf A}}{dt}cdot{bf B}+{bf A}cdotfrac{d{bf B}}{dt}
これは内積をベクトルの成分で分解して計算すれば、すぐに分かります。いわゆる関数の積の微分と同じですね。

外積の微分についても同じように、{bf A}を微分したものと{bf B}の外積と{bf A}{bf B}を微分したものの外積の和になります。
frac{d}{dt}({bf A}times{bf B})=frac{d{bf A}}{dt}times{bf B}+{bf A}timesfrac{d{bf B}}{dt}
これも、外積を成分表示して計算すれはすぐに分かります。

これだけなのですが、重要なのでよく覚えておきましょう。

外積について

今回は外積について話をしようと思います。

外積は、ベクトルが2つあって、timesで書かれる量ですね。
{bf A}times{bf B}

まず幾何学的なイメージを説明します。外積というのはベクトル量で向きをもっています。{bf A}{bf B}の外積の向きは、{bf A}にも{bf B}にも直行する方向で、{bf A}times{bf B}の場合は{bf A}から{bf B}に右ねじを回す方向になります。{bf A}{bf B}の作る平面に直行しています。

外積の大きさというのは、{bf A}{bf B}のなす角をthetaとすると、
{bf A}times{bf B}=|{bf A}||{bf B}|sin{theta}
になります。内積の場合はcos{theta}でした。

{bf B}掛けるsin{theta}{bf A}の方向に対する{bf B}の垂直成分になっています。従って外積の大きさは{bf A}{bf B}の作る平行四辺形の面積になります。

外積がベクトルの成分を用いて計算すると、ややこしい式になるのです、これには分かり易い覚え方があります。{bf A}times{bf B}というのは、行列式(determinant)を用いて次のように書かれます。
{bf A}times{bf B}=left|  begin{array}{ccc}  {bf e}_x & {bf e}_y & {bf e}_z\  A_x & A_y & A_z\  B_x & B_y & B_z  end{array}  right|
ここで{bf e}_x{bf e}_y{bf e}_zはそれぞれx、y、z方向の単位ベクトル、A_xなどはベクトルの各成分です。これの計算方法は別の動画でも説明しますが、余因子展開という手法を用いれば次のように書けます。
left|  begin{array}{ccc}  {bf e}_x & {bf e}_y & {bf e}_z\  A_x & A_y & A_z\  B_x & B_y & B_z  end{array}  right|  ={bf e}_x(A_yB_z-A_zB_y)+{bf e}_y(A_zB_x-A_xB_z)+{bf e}_z(A_xB_y-A_yB_x)

このように書いておくと、ベクトル{bf A}times{bf B}のx成分がA_yB_z-A_zB_yなどとなっていることが明白で、この行列式の書き方を覚えておくと、とても便利です。

内積について

今回は内積について話をします。

内積というのは、2つベクトルがあって、黒ポチで書かれる量ですね。
{bf A}cdot{bf B}

内積とは、2つベクトルがあった時に、間の角をthetaとすると、
|{bf A}||{bf B}|cos{theta}
という量です。
内積のというのはスカラー量なので向きはもっていないですね。

これはどのようなイメージかというと、{bf B}掛けるcos{theta}というのをイメージすると、これは{bf A}方向に対する{bf B}の水平成分です。ですからこの2つのベクトルを考えた時の、2つのベクトルの水平成分を掛け合わせた量が、内積になるわけです。

いちおう参考までに外積の大きさ(外積はベクトル量)というのは、
|{bf A}||{bf B}|sin{theta}
になります。
なので外積と言ったら、2つのベクトルの垂直成分を掛け合わせたものになります。内積は水平成分を掛け合わせたものです。

これは内積の定義なのですが、物理で出てくる際には、thetaを使って書くとこはあまりなくて、このように成分で書かれますね。
A_x B_x+A_y B_y+A_z B_z
それぞれの角成分同士、x成分で掛けて、y成分同士で掛けて、z成分同士で掛けて、そしてこれらを足し合わせたものが内積です。物理ではこのように成分で書かれます。内積は非常に良く出てくる量なので、覚えておいてほしいと思います。

ベクトルについて

ベクトルについて話をしようと思います。

ベクトル、英語で書くとvectorですね。英語読みだと「ベクター」で、「ベクトル」はドイツ語読みだったかと思います。

ベクトルとはどういうものかというと、大きさと向きの2つを持っているのがベクトルです。だから一般には矢印でかかれます。矢印の長さが大きさを表し、矢印がどちらを向いているかが向きを表します。

ベクトルはよく、こういう矢印をつけて( vec{v} )書かれたり、太字({bf v})で書かれたりします。ベクトル(vector)のvをとって、vで書かれることが多いですね。

このベクトルの成分表示ということがよく行われます。むしろベクトルというと成分表示を思い浮かべることが多いと思います。
x軸、y軸、z軸をとって、原点からのベクトルをとったときに、ベクトルの大きさを、x方向の大きさが3、y方向の大きさが0で、z方向の大きさが5というように書くのをベクトルの成分表示といいます。
{bf v}=(3,0,5)

このときそれぞれx成分、y成分、z成分といったりします。

この成分表示はよく使われているのですが、気をつけないといけないのは座標系によって成分の値が変わることです。

ベクトル自体は変わっていなくても、たとえばxyzの向きが変わったりすると、ベクトルは同じベクトルでも、成分表示した値が変わることがあります。
{bf v}=(2,1,0)となったり。
なので成分表示は座標の取り方によって変わるという点は注意が必要です。

ベクトルの成分を{bf v(t)}=(x(t),y(t),z(t)) としたときにベクトルの微分は成分ごとに行います。
frac{d{bf v(t)}}{dt}=(frac{dy}{dt},frac{dy}{dt},frac{dz}{dt})
というベクトルを考えているということになるわけですね。当たり前じゃないかと思うかも知れませんが、大事なことなので説明をしておきました。